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-相続税-
【税理士監修】老人ホーム入所者も対象!3,000万円控除が可能な空き家の特別控除とは?
日本では空き家問題が深刻化しており、多くの人々が頭を悩ませています。
この問題に対応するため、国や自治体はさまざまな補助制度を提供しています。
その中でも「空き家特別控除」は特に注目されています。
この記事では、空き家特別控除の詳細とその利用方法について詳しく解説します。
空き家特別控除制度とは
空き家特別控除制度は、被相続人(故人)が居住していた家屋を相続や遺贈によって取得し、その敷地を規定の期間内に売却することで得た譲渡所得から、最大3,000万円の特別控除を受けられる制度です。
この制度により、譲渡所得税を抑えることができます。
正式名称は「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」といいます。
この制度を適用した場合の譲渡所得の計算は以下の通りです。
譲渡所得 = 譲渡価格(売却金額)- 取得費(買ったときの金額)- 譲渡費用(売却にかかった諸費用)- 特別控除額(適用される控除額)
取得費(買ったときの金額)とは、不動産を購入した際の代金や手数料、改良にかかった費用を合算した金額です。
建物の場合、所有期間中に発生した減価償却費を差し引いて計算します。
譲渡費用(売却にかかった諸費用)とは、不動産を売却する過程で生じる仲介手数料や測量費などです。
取得費の詳細が不明な場合には、譲渡価額の5%を概算取得費として用いることが認められています。
この場合、譲渡所得が高額になるほど、結果的に税額が上昇するリスクがあります。
空き家特別控除の適用要件
空き家特別控除制度を利用するには、対象の不動産が以下の要件を満たす必要があります。
① 建築年月日要件
昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された建物であること。
② 区分所有建物登記の除外
区分所有建物登記がされていない建物である(マンション等ではない)こと。
③ 単独居住要件
相続の開始時点で被相続人以外に居住者がいないこと。
④ 特定の目的を持って、空き家を使用していないこと
相続開始時から売却時(取り壊し時)まで、空き家であること
(事業、貸付け、居住などの目的で、空き家を使用していないこと)。
⑤ 耐震基準の適合
建物を取り壊さず売却をする場合は、一定の耐震基準を満たしていること。
⑥ 売却期間と売却代金
相続開始から3年を経過する年の12月31日までに売却し、売却代金が1億円以下であること。
⑦ 他の特例の適用を受けていないこと
同一の被相続人からの相続または遺贈により取得した空き家について、この特例を適用していないこと。
⑧ 売却先の条件
売却先が特別の関係にある人(親子や夫婦など)でないこと。
特例の改正
改正により、適用期間が延長されました。
この特例の適用期間は、令和9年(2027年)12月31日までです。
空き家の売却をする際に、建物の取り壊し または、建物が一定の耐震基準に適合する必要があります。
令和6年(2024年)1月以降の空き家の譲渡を行った場合は、譲渡日から翌年2月15日までに耐震改修や建物の取り壊し要件が緩和されました。
これにより、耐震改修や取り壊しの計画がより柔軟になりました。
老人ホーム入居者への特例適用
特例は相続開始の直前に被相続人が介護施設に入居していた場合にも適用可能になることがあります。
この適用を受けるためには、被相続人が要介護認定または要支援認定を受けていたなどの一定の要件を満たしている必要があります。
具体的には、以下の要件を確認してください。
入居期間 … 被相続人が、相続開始の直前まで継続して介護施設に入居していたこと。
介護認定 … 被相続人が、要介護認定または要支援認定を受けていたことを証明する書類が必要。
施設の種類 … 被相続人が入居していた施設が、特別養護老人ホーム ・ 介護老人保健施設 ・ 介護医療院などの指定施設であること。
空き家特別控除を受けるための手続き方法
空き家に関する譲渡所得の特別控除を受けるための手続きは、売却によって生じた利益を「譲渡所得」として確定申告する際に行います。
この特例を利用するためには、市区町村から「被相続人居住用家屋等確認書」を取得し、確定申告時に提出する必要があります。
この特別控除の適用を受けるには、売却した不動産に関して発生した譲渡所得に対して、以下の順番で手続きを進めます。
① 事前準備
電気やガスの閉栓証明書、水道の使用廃止届出書などの準備。
老人ホームへの入居証明書(該当する場合)。
② 市区町村への申請
空き家の所在地を管轄する市区町村に「被相続人居住用家屋等確認書」の交付を申請。
上記 ① 事前準備 で準備した書類を申請時に添付。
③ 確認書の受領
「被相続人居住用家屋等確認書」の受領。
④ 確定申告の実施
売却の翌年、2月16日から3月15日までの期間に確定申告と特例の申請手続きを行う。
特別控除を受けるための必要書類
空き家特別控除の適用を受けるためには、確定申告書に以下の書類を添付する必要があります。
特別控除を受けることを希望される場合は、早い段階から準備を進めましょう。
● 譲渡所得の内訳書
譲渡所得の詳細を記載した書類。
● 登記事項証明書
売却した空き家が、亡くなった方から相続または遺贈によって取得されたこと、建築年月日が昭和56年5月31日以前であること、区分所有建物登記がされていないことを証明する書類。
● 被相続人居住用家屋等確認書
市区町村長から交付される書類。
● 耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し
耐震基準の適合を証明するための書類(空き家を取り壊した後にその敷地を売る場合は不要)。
● 売買契約書の写し
売却代金が1億円以下であることを証明するための書類。
まとめ
空き家特別控除制度は、被相続人が居住していた家屋を売却する際に譲渡所得に対する特別控除を受けられる制度です。
最大3,000万円の控除が適用されるため、売却時の負担を軽減できます。
ただし、制度の適用には建物の築年数や耐震基準、売却期間などの要件を満たす必要があります。
また、空き家特別控除の適用は確定申告の対象となるため、詳しくは税理士にご相談ください。
専門家から適切な情報とサポートを受けることで、解決策を見つけられるでしょう。
(記載内容は2024年8月1日までの法改正に基づいています)