相続に関するお役立ち情報
-財産-
【司法書士監修】畑や山林所有者向け!相続土地国庫帰属制度とは

相続した土地の使い道がなく、居住している場所から遠いので放置している…
相続した不動産の近隣住民の方々に迷惑がかからないよう、適切に管理するには経済的な負担が大きい…
そのような理由で相続した土地を手放したいと考えたとき、一定の要件を満たした場合に、その土地を国に引き渡すことができる制度があります。
今回は、相続土地国庫帰属制度の概要や、費用・手続きなどについて解説します。
相続土地国庫帰属制度とは
相続土地国庫帰属制度の概要
相続土地国庫帰属制度は、相続または相続人への遺贈により得た土地を手放して国に帰属させることで、個人の負担を軽減し、土地の有効活用を促進するために設けられた制度です。
この制度により、相続人が維持管理に困難を感じる土地を国に引き渡すことができます。
特に、山林や農地などの維持管理が難しい土地を所有する相続人にとっては、大きな助けとなる可能性があります。
帰属の要件
土地を国庫に帰属させるためには、いくつかの要件を満たす必要があります。
まず、土地が相続または相続人への遺贈により取得されたものであることが前提です。
また、土地が一定の要件を満たしていない場合、帰属が認められないこともあります。
帰属が認められない例として、土地が法的に問題を抱えている場合や、維持管理が不可能なほど荒廃している場合などがあります。
費用と手続きについて
国庫帰属を申請するには、一定の手続きと費用が必要です。
具体的には、土地の評価や手数料、専門家による手続きの支援費用などがかかります。
手続きは、
① 所在する土地を管轄する法務局(本局)※1での事前相談※2
② 申請書および添付書類※3 の作成
③ 土地が所在する法務局の本局への申請書の提出
④ 法務局による審査並びに実地調査
⑤ 結果(承認・不承認・却下)の通知※4
⑥ (承認された場合)負担金※5 の納付
⑦ 土地の国庫帰属
以上の流れで国庫帰属が行われます
※1 引き渡したい土地が遠方にある場合、お近くの法務局(本局)でも相談可能です。
※2 相談の予約が必要です。
※3 下記(1)~(7)の書類が必要です。
(1) 承認申請に係る土地の位置及び範囲を明らかにする図面
(2) 承認申請に係る土地と当該土地に隣接する土地との境界点を明らかにする写真
(3) 承認申請に係る土地の形状を明らかにする写真
(4) 申請者の印鑑証明書(市区町村にて作成)
(5) 相続人が遺贈を受けたことを証する書面(相続人が遺贈により土地を取得した場合に必要)
(6) 土地の所有権登記名義人(or表題部所有者)から相続又は一般承継があったことを証する書面
(承認申請者と所有権登記名義人が異なる場合に必要)
(7) 氏名又は住所の変更があったことを証する書面
(承認申請者と所有権登記名義人は同一で、登記記録に記載されている氏名又は住所に変更がある場合に必要)
(複数の土地を申請したい場合は、申請する土地ごと(一筆ごと)に①~③の書類を作成する必要があります。)
※4 申請から結果(承認・不承認・却下)の通知までに、一定の期間(おおよそ8カ月~1年間)を要します。
※5 土地の性質を基に、標準的な管理費用を考慮して算出された10年分の土地管理費相当額です。
法務局への事前相談
法務局では、土地の国庫帰属に関する相談を受け付けています(事前予約が必要です)。
土地の評価や帰属の可否について、持参された書類に応じて可能な範囲で相談を受けることができるため、事前に相談しておくことが重要です。
具体的な相談ポイントとしては、土地の現況や法的な問題点、帰属のための具体的な手続き方法などがあります。
【持参する書類の一例】
・土地の状況(現況)や全体が分かる画像(または写真)
・登記事項証明書または登記簿謄本
・固定資産税納税通知書
・法務局で取得した地図又は公図
・法務局で取得した地積測量図(測量図が登記されていない場合、専門家に依頼して作成する必要があります)
国庫帰属制度と農地
農地もまた、相続土地国庫帰属制度の対象となります。
申請前に、国庫帰属による所有権移転に係る農地法第3条第1項に基づく農業委員会の許可取得は不要です。
農地に関しては、農業委員会が農地の権利調整を行っているため、農業委員会に相談することも可能です。
土地境界情報について
土地境界の重要性
正確な土地境界は、土地の国庫帰属手続きを円滑に進めるための重要な要素です。
境界が明確であれば、土地の評価が容易になり、法的なトラブルを避けることができます。
また、隣接する土地所有者とのトラブルを防ぐためにも、境界情報は重要です。
申請時の境界書類
国庫帰属の申請時には、境界書類が必要です。
具体的には、土地の測量図や境界確認書などが求められます。
これらの書類をそろえることで、申請がスムーズに進み、国庫帰属が認められる可能性が高まります。
境界が分からないときには
境界が分からない場合は、専門的知識を有する土地家屋調査士に相談することをおすすめします。
相続土地帰属でかかる費用について
弁護士・司法書士・土地家屋調査士の費用
国庫帰属手続きを進める際には、専門家の支援が必要となることが多いです。
弁護士・司法書士・土地家屋調査士などの専門家への報酬も考慮する必要があります。
依頼内容や、依頼をする専門家によって費用が異なるため、事前相談することをおすすめします。
申請の際に必要な審査手数料
法務局に申請を出す場合、審査手数料として、土地一筆当たり14,000円(申請書に、審査手数料の額に相当する額の収入印紙を貼って納付)が必要です。
相続土地国庫帰属制度の負担金
国庫帰属制度を利用する際には、土地の性質を基に、標準的な管理費用を考慮して算出された10年分の土地管理費相当額が負担金として必要になります。
ただし、一定の場合には負担金が高額になることがあります。
まとめ
相続土地国庫帰属制度は、相続により得た土地の維持管理に困難を感じる所有者にとって、問題解決の手段になる可能性があります。
しかし、申請を行うにあたって手続きに必要な費用が高額になるケースもあります。
また、一定の要件を満たしていなかった場合は、手続きにどれだけの時間と費用がかかっても、土地を国庫に帰属させることができません。
申請をするか否かの判断は慎重に行う必要があるため、詳細な手続きや費用については、専門家に相談しながら進めることが重要です。
(記載内容は2025年2月1日までの法改正に基づいています)