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【行政書士監修】「遺留分侵害額請求権」とは?2019年 相続法改正による変更点について解説

2024年06月14日 遺留分

遺産相続が始まると、遺言書に基づいて遺産を分けることが一般的です。
しかし、法定相続人の間で不公平な相続分が指定されることもあります。
民法上、兄弟姉妹以外の法定相続人には、一定の遺留分(法律で保障された最低限の相続財産の割合)を取得する権利が保障されています。
もし遺言書などで遺留分が侵害された場合、遺留分侵害額請求権を行使して遺留分を回復することが可能です。
今回は、遺留分侵害額請求権の概要や手続きの進め方について解説します。


遺留分とは?

遺留分は、法定相続人に最低限保障されている相続分のことです。
被相続人には財産を自由に処分する権利がありますが、遺留分制度は相続財産の一定割合を特定の法定相続人に保障します。

遺言書によって不公平な相続分の指定がある場合、遺留分を侵害された相続人は「遺留分侵害額請求権」を行使できます。
遺留分を有するのは、兄弟姉妹以外の法定相続人(配偶者、子ども、直系尊属)です。

※直系尊属とは、親や祖父母など、自分から見て上の世代の親族を指します。
直系尊属は、子どもがいない場合に限り、遺留分を有することができます。
つまり、被相続人に子どもや孫がいない場合、親や祖父母が遺留分を主張できるということです。

遺留分侵害額請求権とは?

遺留分侵害額請求権は、遺留分を侵害された法定相続人が、受遺者や受贈者に対して遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求できる権利です。

この請求の対象と順序は法律で定められており、主に受遺者が先に負担します。生前贈与も一部対象となります。

遺留分侵害額請求権の消滅時効

遺留分侵害額請求権は、相続開始や遺贈があったことを知ったときから1年間行使しないと時効により消滅します
また、相続開始から10年が経過すると、除斥期間により消滅します。

これは、請求権を早めに行使しなければならないことを意味しますので、注意が必要です。

遺留分侵害額の請求方法

① 話し合い
親族間の問題なので、まずは話し合いで解決を目指します。
最終的に訴訟になる可能性もあるため、初めから弁護士に相談するほうが良いでしょう。

② 内容証明郵便
話し合いがまとまらない場合、訴訟を提起する前に、内容証明郵便で遺留分侵害額請求書を送付することが大切です。
これは、正式な請求の意思表示をするための手段です。

③ 調停
話し合いがうまくいかない場合、家庭裁判所に遺留分侵害額請求の調停を申し立てます。
調停委員が交渉を仲介してくれます。調停は、双方が納得できる解決策を見つけるための手続きです。

④ 訴訟
調停が不成立の場合、遺留分侵害額請求訴訟を提起します。
訴訟では、遺留分侵害の事実を証拠によって立証する必要があります。
証拠収集や訴訟準備は弁護士に相談することをおすすめします。

遺留分侵害額の算定方法

遺留分侵害額は、以下の計算式により算定されます。

遺留分 = 遺留分を算定するための財産の価額 × 総体的遺留分率 × 遺留分権利者の法定相続分

遺留分侵害額 = 遺留分額 - 遺留分権利者が受けた遺贈または特別受益の額 - 具体的相続分(寄与分を除く)に応じて遺留分権利者が取得すべき遺産の価額 + 相続債務のうち遺留分権利者が負担する債務の額

2019年 相続法改正による変更点

2019年7月1日に施行された改正民法により、従来の「遺留分減殺請求権」と呼ばれていたものが「遺留分侵害額請求権」へと名称・内容が変更されました。

この変更により、遺留分侵害の清算方法が、現物返還から金銭清算へと変わりました。

現物返還から金銭清算

最も大きな変更点は、遺留分侵害の清算を現物返還ではなく、金銭で行うこととされた点です。

従来は、遺留分減殺請求によって遺贈や贈与が失効し、目的物の所有権が請求者に帰属しましたが、改正後は金銭清算に一本化されました。

これにより、財産の分割がよりスムーズに行えるようになりました。

遺留分侵害額請求権のメリット

金銭清算に一本化されたことで、複雑な共有関係が生じることがなくなり、使い勝手が良くなりました。

現物返還による清算は、目的財産が共有になることで新たな紛争の原因となることが多かったため、金銭清算に変わったことで、このような問題を回避できるようになりました。

遺留分侵害額請求権の課税関係

金銭清算の場合、支払った側は既に支払った相続税の還付を受けることができます。
逆に、金銭を取得した側は相続税を納める必要があります。

不動産などの資産を移転させた場合には、譲渡所得税がかかることがあります。
このような税金の問題についても、弁護士や税理士に相談することが重要です。

まとめ

遺留分侵害額請求を行う際には、専門知識を持った専門家に相談することが不可欠です。
専門家に相談することで、遺留分の複雑な計算や財産保全の手続き、相続人同士の交渉を効果的に進めることが可能です。

ティアでは相続に関するトラブルや遺留分の問題でお悩みの方に、お悩みの内容に適した専門家をご紹介いたします。
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(記載内容は2024年6月1日までの法改正に基づいています)

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