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-遺産分割-
【司法書士監修】相続人の中に認知症の方がいる場合の手続き|成年後見制度の利用と遺産分割の注意点
相続人の中に認知症の方がいて、判断能力が不十分と認められる場合、成年後見人を選任しなければ有効な遺産分割協議を行うことができません。
遺産分割協議が成立しないと、預貯金の解約や不動産の名義変更が進まず、相続手続きが長期間停滞するおそれがあります。
このような場面では、成年後見制度の利用が検討されるケースが多く見られます。
本記事では、認知症の相続人がいる場合の正しい対応方法、成年後見制度のメリット・デメリット、費用の目安、遺産分割協議時の重要な注意点について、専門的な視点から分かりやすく解説します。
✅ なぜ認知症だと遺産分割協議ができないのか(法的な理由)
✅ 成年後見制度を利用するメリットとデメリット
✅ 手続きにかかる初期費用と毎月の報酬の目安
✅ 親子が相続人の場合に必要となる特別代理人の知識
◎ 遺産分割協議を控えているが、相続人の一人が認知症で意思疎通が難しい
◎ 成年後見制度の利用を検討しているが、費用や長期間の負担が気になっている
◎ 法律に基づいた適切な方法で、後々のトラブルを防ぎたい
認知症の相続人と遺産分割協議ができない理由
認知症の相続人※ がいる場合、遺産分割協議が無効になる主な原因は「意思能力の欠如」にあります。
ここでは、なぜ本人を含めた協議が成立しないのか、法的な考え方を整理します。
相続が発生すると、相続人全員で「誰がどの財産をどれだけ受け取るか」を決める遺産分割協議を行う必要があります。
この協議が成立するためには、参加する全員に「意思能力(自分の行為の結果を判断できる能力)」があることが前提となります。
認知症によって判断能力が著しく低下している場合、その方は有効な意思表示ができないとみなされます。
本人を除外して他の親族だけで協議を行ったり、本人の印鑑を勝手に使って書類を作成したりすることは法律上認められず、そのような遺産分割協議は後日無効となる可能性が非常に高いのです。
この問題を解決するために、本人の代理人として協議に参加する「成年後見人」の選任が必要となります。
成年後見制度を利用するメリット・デメリット
成年後見制度(特に法定後見※1 )は、家庭裁判所の手続きを経て本人の財産管理と身上保護を行う制度です。
相続手続きのために利用するケースも多いものの、開始後は長期間にわたり本人の生活や財産管理に影響を与えます。
なお、本人に十分な判断能力がある段階であれば、任意後見※2 契約など別の制度を検討される場合もあります。
法定後見とは、すでに判断能力が不十分となった方について、家庭裁判所が後見人を選任する制度です。
任意後見とは、将来判断能力が低下した場合に備え、あらかじめ本人が後見人となる人を契約で定めておく制度です。
メリット
遺産分割協議を有効に進められる
後見人が本人を代理することで、法的に有効な遺産分割が可能になります。
不当な契約や財産の使い込みから守られる
本人の判断が不十分なまま高額商品を購入してしまったり、特定の親族に財産を使い込まれたりするリスクを防ぎ、本人の生活資金を確保できます。
身上保護の充実
後見人は財産管理だけでなく、介護サービスの契約や施設入所の手続きなど、本人の生活を支える事務(身上保護)も担います。
成年後見制度を活用した資産凍結のリスクと相続への備えについては、別記事で詳しく解説しています。
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デメリット
原則として途中でやめられない
「相続手続きが終わったから後見人を解任する」ということはできません。本人の判断能力が回復するか、亡くなるまで制度は継続します。
資産の自由な処分が難しくなる
後見制度は本人保護を目的としているため、親族への贈与や貸付などは原則として認められていません。
家庭裁判所の監督を受ける
後見人は、財産目録や収支状況を定期的に裁判所へ報告する義務を負います。親族が後見人になった場合でも、この報告義務は避けられません。
なお、後見制度の運用負担や報酬額は、本人の財産状況や事案の内容、家庭裁判所の判断によって個別に異なります。
制度利用を検討する際は、開始後の継続的な管理負担も含めて事前に全体像を確認しておくことが大切です。
専門家に相談して状況を整理しませんか
成年後見制度は、一度開始すると原則として取り消すことができません。
将来的な費用負担やご家族の状況を踏まえ、本当に制度の利用が必要かどうか、別の選択肢がないかを事前に整理しておくことが重要です。
ティアの相続サポートでは、無理な勧誘を行うことなく、お客様の状況に応じた専門家をご紹介いたします。
成年後見人選任から遺産分割までの基本的な流れ
認知症の相続人がいる場合、一般的には次の流れで手続きを進めます。
① 家庭裁判所へ成年後見開始の申立て
② 医師の診断書提出・必要に応じて鑑定
③ 家庭裁判所による後見人選任
④ 後見人による財産調査
⑤ 遺産分割協議への参加
⑥ 預貯金解約や不動産名義変更の実行
後見人の選任までには、一般的に申立てから1か月から3か月程度かかることが多いとされています。
書類不備や鑑定の実施によっては、さらに期間を要する場合もあります。
相続手続きを早期に進めたい場合は、できるだけ早めに準備を始めることが重要です。
成年後見制度にかかる費用の詳細
制度を利用するにあたっては、大きく分けて「申立て時の初期費用」と「制度利用中にかかる継続的な費用」の2種類があります。
1. 手続き開始時にかかる初期費用
裁判所への実費(印紙・切手代):約1万円
医師による鑑定費用(必要な場合のみ):約5万円から10万円
専門家への書類作成依頼料:約10万円から20万円
必要書類(戸籍謄本等)の取得費用:数千円程度
2. 制度利用中にかかる継続費用(後見人報酬)
基本報酬:月額2万円から6万円程度
付加報酬:遺産分割協議への参加など、特別な事務が発生した場合に追加
注:本人の管理財産額が多いほど、月額報酬が高くなる傾向にあります。
親族が後見人に選ばれた場合は報酬を辞退することも可能です。
弁護士や司法書士などの専門家が選任された場合は、月々の報酬支払いが継続的に発生します。
遺産分割における「利益相反」と「法定相続分」の注意点
認知症の親に代わって子供が後見人になるケースは多いですが、相続においては「利益相反(りえきそうはん)」という問題に注意が必要です。
注意が必要な利益相反の具体例
例えば、父親が亡くなり、相続人が「認知症の母親」と「長男」の2人だけであるケースを想定します。
長男が母親の成年後見人になっている場合、長男は「自分の分を確保したい相続人」としての立場と、「母親の権利を守る後見人」としての立場の両方を持つことになります。
長男が自分の取り分を増やせば、自動的に母親の取り分が減るという利害の対立(利益相反)が生じるため、長男が母親の代理として遺産分割協議書に署名捺印することは法律上認められません。
この場合、母親のために「特別代理人※」を別途選任する必要があります。
特別代理人とは利益相反がある場合に、家庭裁判所が選任する本人専用の代理人のことです。成年後見人が代理できない場面に限り、遺産分割協議など特定の手続きについて本人の権利を守る目的で選任されます。通常は、対象となる手続きが完了すると、その職務は終了します。
法定相続分の確保
成年後見人(または特別代理人)は、本人の不利益になるような合意はできません。
遺産分割協議において、一般的には、本人の法定相続分(法律で定められた割合)を下回らない内容とすることが求められます。
「母は施設に入っていてお金を使わないから、全ての財産を子が受け取る」といった内容の協議は、本人の利益を害すると判断され、認められない可能性が高いとされています。
複雑な手続きをスムーズに進めるために
利益相反や特別代理人の選任は、法的な知識が不可欠な非常にデリケートな問題です。
ご家族だけで判断し、後から遺産分割が無効になってしまうリスクを避けるためにも、専門的な視点からの確認をおすすめします。
手続きの進め方に関する疑問には、相続手続きの経験が豊富な専門家がお答えします。
よくある質問
Q. 認知症の程度が軽い場合でも後見人は必要ですか?
A. 遺産分割協議を有効に行うためには、本人に十分な意思能力があることが必要です。判断能力に疑いがある場合、金融機関や法務局の手続きが進まない可能性があるため、専門家への事前確認が重要です。
Q. 家族が必ず後見人になれますか?
A. 家庭裁判所は、本人(被後見人)の利益を最優先に判断して後見人を選任するため、親族以外の専門職が選ばれることもあります。
Q. 相続手続きが終われば後見制度は終了しますか?
A. 原則として終了しません。本人の判断能力が回復するか、亡くなるまで継続します。
まとめ
認知症の相続人がいる場合、成年後見制度の活用を検討するケースが多いのが現状です。
制度を利用すれば遺産分割協議を進めることが可能になる一方、費用負担や継続的な管理といった長期的な影響も生じます。
また、後見人が選任された後の遺産分割では、本人の権利を守るための法的な制約が厳しくなります。
自己判断で手続きを進める前に、制度の全体像と今後の影響を正しく把握することが大切です。
認知症の相続人が関わる相続手続きは、一般的な相続に比べて必要な判断や準備が多く、状況によって最適な進め方も異なります。
特に、成年後見制度を利用すべきかどうかの判断は、早い段階で整理しておくことが重要です。
ティアの相続サポートでは、成年後見制度の利用可否の整理から遺産分割手続きまで、個別の状況に応じた専門家のご紹介を行っています。
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認知症の家族が関わる相続は、法律的な制約が多く、ご家族だけで解決しようとすると手続きが長期化したり、思わぬトラブルに発展したりすることがあります。
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少しでも不安を感じた場合は、早めの状況整理が重要です。
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(記載内容は2026年3月1日までの法改正に基づいています)



