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-遺言-
【行政書士監修】遺言書の種類と書き方について解説
遺言書には、いくつかの種類が存在します。
今回は、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の書き方と、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。
遺言書とは
遺言書は、遺言者(被相続人)が自身の死後における財産の分配やその他の意向を相続人や関係者に明確に示すための法的文書です。
遺言者は、遺言書を通じて誰にどの程度の財産を譲渡するか、具体的な財産の分割方法を指定できます。
また、財産分割以外にも、遺言執行者の指定や特定の人への特定の指示など、遺言者の意思を反映させることができます。
遺言者の死後に遺言書があると、相続財産の分割方法について親族間の争いを避けることができるため、重要となります。
遺言書の方式
遺言書には、普通方式と特別方式があります。
その中でも、普通方式では自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言に分けられ、特別方式※では臨終遺言・隔絶地遺言に分けられます。
今回は、普通方式(自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言)について解説します。
※特別方式……死が迫っているとき(病気・災害)などに用いられます。
自筆証書遺言の書き方
● 遺言者が氏名・日付を含めた全文を自書する
(パソコンなどで作成・代筆・音声の録音は不可)
● 押印をする
(認印・拇印も可)
以上の要件を満たせば成立し、様式は自由です。
ただし、目録などのページごとに署名・押印が必要です。
《 自筆証書遺言のメリット 》
● すべての遺言書の方式の中で、最も手間と費用がかからない
● いつでも内容の修正が可能
● 秘密を保持するのに適している(遺言書の存在そのものも秘密にできる)
《 自筆証書遺言のデメリット 》
● 開封時に家庭裁判所における検認手続きが必要(検認手続きには2カ月近くかかる)
● 自宅で保管されることが多いため、紛失・偽造・改ざんの危険がある
● 本人の筆跡かどうか疑われることがある
● 遺言書の効力を失う可能性が高い(文章が不明確・方式違反)
この制度を利用すると、遺言書の紛失・改ざんを防ぐことができます。
遺言書の保管の申請のためには、遺言者自身が法務局に出向き、申請しなければいけません。
開封時に家庭裁判所での検認手続きは不要となります。
豆知識:自筆証書遺言書保管制度について
自筆証書遺言書保管制度を利用する場合には、一部の法務局(遺言書保管所)に出頭し、保管の申請を行う必要があります(事前予約必須)。
手数料として、遺言書1通につき3,900円が必要です。
その法務局では、節税対策や相続の手続きをスムーズにする方法・トラブル回避方法などの具体的なアドバイスはいただけません。
そのため、専門家からアドバイスとチェック(様式や添付方式に間違いがないか)を受けることをおすすめします。
豆知識:遺言書の家庭裁判所での検認手続き
家庭裁判所で遺言書の検認手続きを行う理由は、相続人に遺言の存在と内容を知らせるとともに、遺言書の形状や加除訂正の有無、日付、署名などを明確にし、偽造や変造を防止するためです。
これは、遺言の効力が有効か無効かを判断する手続きではありません。
公正証書遺言の書き方
① 遺言者が公証人の前で遺言を口授する
(遺言者が2名以上の証人とともに公証役場へ行く、または公証人の出張を依頼する、のいずれかの方法にて行う)
② 公証人は口授内容を筆記した後、遺言者と証人に読み聞かせ、または閲覧させて筆記の内容を確認する
③ 筆記の内容を承認した遺言者と証人が署名・押印すると遺言が成立する
(遺言者が署名できない場合には、公証人がその事由を付記することで署名に代えることができる)
《 公正証書遺言のメリット 》
● 開封時に家庭裁判所での検認手続きは不要
● 遺言書の原本が公証役場で保管されるため、紛失・偽造・改ざんの危険がない
● 専門家のチェックを受けるので間違いがない
● 確実に本人の意思確認が行われ、紛争予防の効果が高い
《 公正証書遺言のデメリット 》
● 専門家に依頼するため、費用がかかる
● 秘密保持が難しい(公証人・証人に内容が知られる)
● 内容を更新したい場合に、費用がかかる
豆知識:公証人とは
公証人とは、当事者や関係者からの委任により公証をする、国家機関のことです。
公証人は検察官・裁判官・司法書士・弁護士・法務局長など法律関係の仕事をしていた者の中から法務大臣の任命によって決まります。
豆知識:遺言の証人になれない人もいる
遺言書の証人になれない人は以下の通りです。
● 未成年者
● 推定相続人および受遺者
● 推定相続人、受遺者の配偶者ならびに直系血族
● 公証人の配偶者
● 公証人の四親等内の親族
● 公証人の書記および使用人
秘密証書遺言の書き方
① 遺言者が遺言書を作成(自筆・パソコン・代筆可、テープ録音不可)し、署名(遺言者の自筆)・押印・封入・封印する
② 遺言者は公証人および2名以上の証人に封書を提出する
③ 公証人が封書の表面に日付・遺言者の氏名・住所などを記載する
④ 遺言書に、公証人と遺言者、証人全員が署名・押印することにより、遺言が成立する
《秘密証書遺言のメリット》
偽造・改ざんの危険がない
《秘密証書遺言のデメリット》
● 開封時に家庭裁判所の検認手続きが必要(検認手続きには2カ月近くかかる)
● 公証役場では保管してくれない(遺言者側で相続開始まで保管する)
● 紛失・未発見・隠匿の危険がある
● 遺言の内容は秘密にできるが、遺言の存在は公証人・証人に知られる
● 開封後、証書の解釈などを巡り対立が生じる場合もある
まとめ
今回は遺言書の普通方式(自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言)について解説しました。
せっかく遺言書を作成しても、法律に沿った形式で記載されていなかったために遺言書が無効となり、争族に発展することもあります。
このような事態を避けるためにも、専門家のチェックが入る公正証書遺言で遺言書を残すことをおすすめします。
(記載内容は2024年6月1日までの法改正に基づいています)