相続に関するお役立ち情報
-相続手続きの流れ-
【司法書士監修】相続手続きで必須の期限とは?相続放棄や相続税申告などの重要ポイントを解説
相続手続きは、被相続人の財産を次世代へ引き継ぐための重要なプロセスです。
その過程には多くの法的な期限が設けられていますので、注意が必要です。
これらの期限を守らないと、相続の権利を失ったり、相続税の負担が増加したりするリスクが生じます。
本記事では、相続手続きにおける主要な期限や、それぞれの期限内に行うべき手続きについて詳しく解説します。
相続を円滑に進めるために、ぜひ参考にしてください。
相続手続きにおける重要な期限とは
相続手続きにおいて重要な期限は
① 3カ月以内に行う相続の意思決定
② 4カ月以内に行う準確定申告 (一部の方のみ対象)
③ 10カ月以内に行う相続税の申告 (一部の方のみ対象)
以上の3つがあります。
被相続人(亡くなった方)の財産を誰がどのように受け継ぐのか、また残された資産状況によっては法的な期限が設けられており、期限を守らないと、財産の分割が困難になったり、税負担が増加するリスクがあります。
相続手続きをスムーズに進めるためには、各期限を正確に把握し、適切に対応することが不可欠です。
相続手続きの流れと期限
相続手続きは、被相続人の死亡をきっかけに始まります。
通常、まず相続人を確定し、次に遺産をどのように分けるかを話し合います。
この過程で、単純承認や相続放棄、限定承認、準確定申告、遺産分割協議、相続税の申告など、さまざまな手続きが発生します。
それぞれの手続きには法律で定められた期限があり、これを守らないと法的な問題が生じる可能性があります。
相続開始からの期限
相続は、被相続人が亡くなった日から開始されます。
相続人は、財産の内容を確認し、相続するか放棄するかの判断を行います。
この初期の段階で特に重要なのが、相続放棄や限定承認の申出を行う期限(3カ月以内)です。
この期限を過ぎると、自動的に全ての財産を相続することになり、後から放棄することができなくなりますので、注意が必要です。
各手続きの期限を把握する重要性
相続手続きには多くの期限があり、これらを正確に把握しておくことが重要です。
たとえば、相続税の申告期限を過ぎると、延滞税や加算税が発生することがあります。
また、遺産分割が遅れると、相続人の間でのトラブルが発生するリスクも高まります。
これらの期限を把握し、適切に対応することが円滑な相続手続きの鍵となります。
遺産相続手続きの期限一覧
以下に、遺産相続手続きにおける主な期限を具体的に説明します。
これらの期限を守ることで、法的な問題を回避し、スムーズな相続手続きを進めることができます。
3カ月以内
相続放棄・限定承認の申出
相続人が相続を放棄する場合、または限定承認(負債の範囲内でのみ相続を受ける手続き)を行う場合は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内に家庭裁判所に申出を行う必要があります。
この期限を過ぎると、相続放棄や限定承認は認められず、すべての財産と負債を引き継ぐことになります(単純承認)。
4カ月以内
準確定申告
被相続人が死亡した年の1月1日から死亡日までの所得については、相続人が準確定申告を行います。
この申告は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から4カ月以内に税務署に提出しなければなりません。
申告を怠ると、後で税務署から延滞税・加算税などが追徴される可能性があります。
10カ月以内
遺産分割協議・遺産分割協議書の作成(相続税の申告がある場合)
相続人全員で遺産の分け方を話し合う遺産分割協議は、相続税の申告期限である10カ月以内に完了させる必要があります。
この協議の結果をまとめた遺産分割協議書も同時に作成することが求められます。
この期限を過ぎると、相続税額を低くする特例を適用できずに、相続税が高額になる可能性があり、結果的に相続人間でのトラブルが生じるリスクが高まります。
また、遺産分割協議が終わっていないからといって、期限内に相続税の申告を行わないと、無申告加算税の対象となってしまうので、注意が必要です。
遺産分割協議がスムーズに進まない場合は、専門家に相談することをおすすめします。
預貯金などの解約・名義変更(相続税の申告がある場合)
被相続人の預貯金や不動産の名義変更には明確な期限はありませんが、相続開始を知った日から10カ月以内に行うことで、被相続人の遺産を相続してから相続税を支払うことが可能になります。
遺産分割協議が完了し、相続することが確定したら、すぐに手続きを行うことをおすすめします。
相続税申告・納付
相続税の申告と納付は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内に行わなければなりません。
期限を過ぎると延滞税が課せられる可能性があり、余分な費用が発生することになります。
相続税の申告は難しい部分も多いため、税理士に相談すると良いでしょう。
1年以内
遺留分侵害請求
遺留分を侵害された相続人は、相続開始を知った日または遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った日から1年以内に遺留分侵害請求を行う必要があります。
この期限を過ぎると、遺留分侵害請求が認められなくなるため、早めに対処することが重要です。
2年以内
高額医療費の申請
被相続人が生前に支払った高額医療費については、診療を受けた月の翌月から2年以内に申請することで、医療費控除を受けることができます。
この申請を怠ると、高額医療費を請求できなくなるため、注意が必要です。
葬祭費・埋葬費の申請
葬祭費や埋葬費の申請は、葬祭を行った日の翌日から2年以内に行う必要があります。
亡くなった方が国民健康保険・後期高齢者医療制度に加入していた場合は葬祭費が、健康保険などに加入していた場合には埋葬費が支給されます。
葬祭費の申請の場合、最近では役所で保険証の返却手続きを行う際に同時に行う方が多いです。
3年以内
相続登記
不動産の相続登記は、所有権の取得を知った日から3年以内、または遺産分割協議が成立した日から3年以内に行うことが求められます。
相続登記を怠ると、後に不動産の売却や名義変更が困難になる可能性があります。
また、正当な理由がなく相続登記を怠った場合は、10万円以下の過料が科されることがあります。
死亡保険金の請求
死亡保険金の請求も、権利を行使できる時から3年以内に行う必要があります。
この期限を過ぎると、保険金を受け取る権利が失われることがあります。
相続税の申告が必要な方は、10カ月以内に手続きが必要となりますので、なるべく早めに保険会社に連絡しましょう。
特例措置と期限
相続手続きには、特例措置が設けられている場合もあり、これらの措置を適用するためには、決められた期限内に手続きを行う必要があります。
相続税の軽減措置を確実に適用するためには、早めに準備を始めることが重要です。
必要な書類や手続きについて、専門家に相談しながら進めることで、軽減措置を最大限に活用できます。
配偶者控除の申告期限
相続税の配偶者控除を適用する場合、配偶者が受け取る財産にかかる相続税を大幅に軽減できます。
相続税申告は相続開始を知った日から10カ月以内に行う必要があります。
小規模宅地特例の適用条件
小規模宅地の特例を適用することで、一定の要件を満たす土地の評価額を大幅に減額することが可能です。
相続税申告は相続開始を知った日から10カ月以内に行う必要があります。
特例延長の可能性と注意点
相続税の納付には延長措置が設けられている場合がありますが、この延長を利用するには特定の条件を満たす必要があります。
特例による延長可能なケース
納付期限の延長が可能なケースとして、財産の売却が難しい場合や、相続人が多額の相続税を一度に納付することが困難な場合などがあります。
この場合、延納や物納といった特例が適用されることがあります。
延滞のペナルティと対策
相続税の納付を期限内に行わなかった場合、延滞税や加算税が課される可能性があります。
これを避けるためには、早めに納付計画を立てることが重要です。
期限内に納付しない場合の影響
相続税の納付期限を過ぎると、財産の差し押さえなどの厳しい措置が取られることもあります。
このような事態を避けるためにも、期限内に納付を完了させることが重要です。
遺留分と期限
遺言や贈与によって遺産の分け方が不公平になることがあります。
遺言書がある場合、その内容にそって遺産相続をしていきますが、法定相続人が最低限受け取ることができる相続財産の割合というものがあり、遺言書の内容がどのようなものであっても、主張すれば遺産を取得できます。
これを遺留分侵害額請求権といいます。
遺留分を侵害された場合の対処や請求期限についても注意が必要です。
遺留分の請求ができるのは、相続人から見て、配偶者、子ども、親までで、兄弟姉妹は遺留分の請求ができません。
遺留分侵害の場合の対処法
遺留分が侵害された場合は、遺留分侵害額請求という手続きを通じて、相続財産の一部を取り戻すことができます。
この手続きを行うには、相続開始を知った日から1年以内、または、遺留分侵害を知ってから1年以内に請求しなければなりません。
また、遺留分の請求には時効があり、相続や遺留分侵害を知らなくても、相続開始から10年が経過すると遺留分侵害請求権が消滅してしまいます。
時効がある権利なので、早めに手続きを行うことが重要です。
証明書の取得と期限
相続手続きには、戸籍謄本や住民票など、さまざまな証明書の取得が必要です。
これらの証明書にも有効期限があるため、期限内に取得し、手続きを進めることが重要です。
まとめ
相続手続きには、多くの期限が存在し、それらを守ることが相続人の権利を守るために非常に重要です。
期限を過ぎると手続きが難しくなり、余計な費用やトラブルが発生する可能性があります。
適切なタイミングで専門家に相談し、計画的に手続きを進めることで、スムーズな相続が実現します。
(記載内容は2024年10月1日までの法改正に基づいています)